猫も肛門嚢炎という疾患があります。「はて?それってどんな病気?」多くの猫飼いさんが首をかしげると思いますが、それほど発症頻度が多くないので無理もありません。
犬のオーナーさん、特に小型犬を飼っていれば知っているし、トリミングの際には「肛門腺絞っておいてくださいねー」なんて普通のことなのかも?
ただ、猫も肛門嚢炎という病気になるし、放っておいたら大惨事になるので・・・飼い主さんにはぜひ知っておいてほしい肛門まわりのおはなしです。
お尻のまわりに大きな傷が!膿も出てるーっ!!
ある日愛猫のお尻になにやらベタベタした血混じりのものが付いている。慌てて見てみたら、肛門の近くにパックリ割れた傷を発見!
ぎゃあぁぁぁ~っ!どうしたのーっ!?
たいていの飼い主さんはびっくりしてしまいますね。これ、肛門嚢破裂の可能性がかなり高いです。
猫の肛門嚢とは?どこにある?
肛門嚢とは、『におい袋』とも言われる肛門腺から分泌されたにおいの元を貯めておく袋のことです。
場所は肛門の少し下に二つ、左右対称の位置にあります。
猫にとって『におい』はとても重要なものです。自分のにおいを付けてまわるマーキングは、テリトリーを示す役割をします。
1匹1匹の猫は人間には感知できない特別なにおいを持っていて、猫はこの『におい』で個体を識別してるそうですよ。
肛門嚢に貯まった分泌液は、通常は排便するときに自然に排出されます。あとは、驚いたときやパニックになったときにピュッと放出されます。
臭いからそばにいればわかります。
だから本来は放っておいても問題はないはずなのですが・・・。
肛門嚢炎の症状は?
本来は肛門腺液は自然に排出されるはずなのに、何らかの理由で開口部が閉じて内容物が肛門嚢にたまって炎症を起こした状態が肛門嚢炎です。
出口がないからドンドン貯まっていきます。
当の猫は、お尻(特に肛門の周辺)に違和感を感じるから何度もしつこく舐めたり、床にお尻をこすりつけるようなしぐさをするようになります。
自分のシッポにじゃれ付いているように見えるときもあるかもしれません。要するに、お尻が変なのだっ!!ってことです。
炎症が進むと、いきんだときに違和感や痛みが起こることもあり、それが原因で便秘になる子もいます。
こんな症状があったら要注意
- しつこくお尻周辺をグルーミングする
- お尻をこすりつける
- 自分のシッポを気にする
- トイレに入ってもすぐ出てくる(便秘気味)
- 元気・食欲がない(炎症性の発熱の可能性)
肛門嚢炎の原因は?なりやすい猫のタイプって?
猫の場合、肛門腺の存在自体知らない飼い主さんが多いので、実際に破裂してからあわてて病院に駆け込んで発覚することが多いです。
なぜ排出されずに貯まってしまうのか、はっきりした原因は特定できないことが多いけれど、なりやすいと言われている猫のタイプはいくつかあります。
- 下痢や軟便を繰り返す
- 運動不足
- 加齢
- 肥満
でも、どれも決定的な要因とは言えないようです。
下痢や軟便が続いている場合は、肛門回りが汚れやすく肛門腺の開口部が細菌感染しやすくなることと、いきまないせいで便と一緒に肛門腺が排出されないから。
加齢・運動不足で肛門括約筋が衰えて排出しにくくなると言われています。
肥満に関しては、運動不足とも関係しますが、やっぱり筋肉の衰えが要因となる説と、脂肪によって直腸が圧迫されてうまくいきめないせい・・・なんていう獣医さんもいます。
また、体質的に分泌液が多い子や、分泌液がドロッとしている猫も詰まりやすいそうです。
ちなみに、肛門腺液って水っぽい子からドロリと粘状の子まで、千差万別です。どちらでも特に異常というわけではないそうなのでご安心を。
自宅でできるチェックポイント
猫の肛門の少し下の左右を触ってみましょう。ふくらみを感じたら、肛門嚢に肛門腺液がたまっています。
肛門絞りをするか、無理をしないで動物病院に連れて行きましょう。
猫の肛門嚢が破裂してしまったら!?
肛門嚢炎はそもそも猫の疾患のうちポピュラーなものではないので、破裂してあわてて病院に行って初めて知った、という飼い主さんも多いです。
破裂するとけっこうグロイ・・・痛々しいです。
想像してみてください。行き場のなくなった膿が皮膚を破ってパンッ!!と出ちゃった状態ですからね~。。。
すぐに病院に行った方がよいのはもちろんですが、慌てないでくださいね。破れただけでは命にかかわることはないはずですから。
猫が痛がって暴れたら無理をする必要はありませんが、濡らしたコットンやガーゼで被毛に付いた膿を取れたら拭ってあげましょう。患部には触らないように、ね。
猫の毛って絡まりやすいので、他の場所に付かないようにした方が良いですから。
肛門嚢破裂の治療は?
流れとしてはこうです。
- 患部の周りの毛を剃る
- 消毒・洗浄
- 抗生剤の服用
毛を剃ってむき出しになった患部はなかなかのものです。パックリ穴があいて赤い粘膜が見えていることがほとんどです。
皮膚が壊死して黒ずんでいることもあります。
え?治療ってこれだけ?・・・そう、基本はこれだけです。抗生剤は炎症止めとさらなる感染症予防のために必須です。
上手く薬が飲ませられないな、と思ったら獣医さんに相談してください。2週間持続する注射もあります。打つかどうかは獣医さんの判断です。
あとは患部の洗浄に通う必要もあります。病院によっては自宅でできるよう指導してくれるところもあります。
二次感染を起こさず、順調に回復すれば2週間程度で傷口はふさがります。ただ、肛門嚢炎は繰り返すことが多いので、一旦治ったからと言ってそう安心はできないのも事実なのです。
猫も定期的な肛門腺絞りが必要か?
じゃあ、猫は定期的に肛門腺絞りが必要かという問題です。肛門腺絞りとは、肛門嚢に刺激を与えて分泌物を出すことです。
結論から言うと、必要ないでしょう。ほとんどの獣医さんも同じことを言うと思いますよ。ただし、先に書いたように、一度肛門嚢炎にかかると繰り返してしまう場合が多いので、そういう子は必要になります。
まとめ
本来は自然に排出されるはずの肛門腺液。特にケアをしなくても大丈夫ですが、何らかの理由によってうまく出すことができなくなると、貯まってしまって肛門嚢炎になることもあります。
猫の健康チェックは飼い主の役目ですから、日頃から肛門回りを観察しておきましょう。おかしいな、と思ったら獣医さんに診てもらうようにすれば、ある日突然破裂!なんてことも避けられます。
破裂すると、何度も洗浄したりエリザベスカラーを付けて生活しなければならなくなったりと、猫のQOLが下がっちゃうので転ばぬ先の杖!ですよ。